現代山形考〜藻が湖伝説〜


〇二   X教授の研究室

最終更新日:二〇二〇年九月一一日

最終更新日:2020年9月11日


X教授の研究室

ここは、とある大学の研究室。蔵王の麓にある見通しのいい窓辺からは、小さなすり鉢状の山形盆地がきれいに見える。さっきからトビが上昇気流と遊んでいるな。

ピーヒョロロロロ…

壁一面の古びたキャビネットの中には化石や化学模型から、郷土玩具にフィールドワークで集められた素性のわからない器物、呪術物までもが並び、まるで大航海時代の珍品陳列室「驚異の部屋」といった様相です。この研究室には考古学、民俗学、神話学、保存修復学、芸術家など、様々な領域の研究者が所属しています。学問的エビデンスだけにとらわれることなく、かといって芸術家の想像力の飛躍に任せるのでもなく、その両者が日々侃侃諤諤と東北の、世界の未来を考えるための議論を繰り広げ、展覧会という形で世に問うのがこの研究室のスタンスです。

古から今を眺める考古的な態度と、現代に残る様々な風習を考現的に考察する態度、さらには我々のとっての「地域」という身近な部分から「日本」を眺め表現していく研究者たちが、今日もこの古びた研究室に集まっています。



この章の作家


深井聡一郎/草彅裕/青野友哉/田口洋美