日本のかたち
本来、「現代山形考〜藻が湖伝説〜」は東京オリンピックの終了直後に、国の重要文化財である山形県郷土館「文翔館」を会場にして開催される予定でした。一八七六年に現在の山形県が成立し、一八七七年に初代山形県令・三島通庸により建てられた県庁舎が焼失したのが一九一一年のことです。一九一六年に再建された新庁舎は、英国近世復興様式を基調としたレンガ造りの重厚な耐火建築物で、一九九五年から現在の文翔館として公開されるようになりました。
私たちが何故ここを展示会場に選んだかというと、洋風建築でつくられた近代化の権化のようなこの場所から、今一度「日本のかたち」を眺めてみたいと思ったからです。
私たちが生まれる前から整備されていたインフラや構築されていた様々な仕組み、それはほんとうに今の時代にあっているものなのか? 機能不全を起こしているところはないか? 不具合を私たちなりにリノベーションし直し、真の意味での社会の全体性を回復するため、作家たちはまず今見える「日本のかたち」を作り上げました。