現代山形考〜藻が湖伝説〜


〇八   見果てぬ夢、ありえたかもしれない世界

最終更新日:二〇二〇年九月一一日

最終更新日:2020年9月11日


見果てぬ夢、ありえたかもしれない世界

山形ビエンナーレ2020開催においては様々な対話と変更と逡巡がありました。山形大花火大会、日本一の芋煮会、さらには花笠祭りといった山形のアイデンティティとも言えるイベントがことごとく中止になる状況下で、祝祭としてのビエンナーレを開催し不特定多数の人々を山形に迎えることは倫理的に可能なのか?また、大学主催の芸術祭として活躍してくれる学生たちをフロントラインに立たせることも難しく思えました。

「現代山形考〜藻が湖伝説〜」については早くから文翔館で開催するということが決まっていたので、参加作家とともに文翔館で展示する意味や場所性を考えながら進めていたプロジェクトがほとんどであり、展示場所の変更は展覧会コンセプトの死を意味していました。みるみるうちに状況は悪化していき、多くの芸術祭が中止や延期を発表する中、コアメンバーの中では、やり方如何は検討するとして「とにかくやるべきでしょう!」という機運には救われました。

山形ビエンナーレ2020は企画段階ではビフォアコロナであり、実施段階ではポストコロナであるという断絶を挟んだ稀有な芸術祭の実践になるはずだという思いから、その予定されていた発表方法からのズレ方や代替策そのものにも着目し、そのものさえ表現していくという方向が確認されました。2022年に再び文翔館でフルスペックで開催するための物語として参加作家たちと意志の共有ができたのは最近のことです。

コロナ以前に、エピローグとして決めていたタイトルは、「見果てぬ夢、ありえたかもしれない世界」です。もちろん延期となったオリンピックの存在が裏にはあります。あっという間に私たちを包み込んだコロナ禍によって様々な制限が加えられる中、それでもありえたかもしれない世界を夢想すること、可能世界が広がるイマジネーションを手放さないためにも、あらゆる手段を使ってこのプロジェクトを実現させていきます。



この章の作家


岡崎裕美子+ナオヤ/森岡督行/永岡大輔/ゲッコーパレード